【第7回】そのローストビーフ、本当に「生」?〜加熱食肉製品の表示義務〜

こんにちは、肉切る食品法務専門行政書士のカネウジです。

今回は「ローストビーフ」にまつわる表示義務について解説します。
このテーマ、現場でも意外と見落としがちですが、食品表示基準や規格基準に明確なルールがあるんです。

◆ 「ローストビーフ」と表示するにはルールがある?

実は、「ローストビーフ」と一言で言っても、
• 加熱しているけどレアな見た目
• しっかり加熱してるけどしっとり
• 冷凍品を解凍してる

など、その状態はまちまちです。

ですが、厚労省が定める「加熱食肉製品の規格基準」では、「ローストビーフ」として販売するには以下のような基準を満たす必要があります。

◆ ローストビーフ=加熱食肉製品?

はい、そのとおり。
ローストビーフは、以下のように「加熱食肉製品」として扱われます。

【加熱食肉製品の定義(抜粋)】
加熱食肉製品とは、食肉に加熱処理を施し、中心部が63℃で30分間以上(またはこれと同等以上)加熱されたもの。

つまり、ローストビーフを「加熱食肉製品」として製造・販売する場合、
• 十分な加熱処理がなされていること
• 加熱条件(温度・時間)を記録・管理していること
• その事実に基づいた表示を行うこと

が求められるのです。

◆ 表示義務としてはどうなる?

食品表示基準第3条、4条、7条、さらに9条で、
一般消費者に誤解を与えるような表示は禁止されています。

特に「加熱していないかのような印象を与える表示」はNGとされることも。

【例】誤認を招く恐れのある表示

以下は、現場でよく見かけるけれど、注意が必要な表現例です。

・「生ローストビーフ」
→ 「生」と「加熱」の概念が矛盾。加熱食肉製品であることを隠してはいけません。

・「とろけるレアローストビーフ」
→ 表現として惹きはありますが、「レア=未加熱」と誤解されかねません。

・「自家製レアビーフ」
→ 加熱温度・時間の記録がなければ、基準違反のリスクも。

かくいう私も、直火焼きしたローストビーフを、かつて「たたき風ローストビーフ」と表記していたところ、保健所から指摘を受けて、「たたき風」ではなく「和風」と表記を直したことがあります。

◆ 「見た目がレア」でも「基準に適合」していればOK?

そのとおりです。
ローストビーフは中心が赤く見える場合でも、基準どおり加熱されていれば「加熱食肉製品」です。
だからこそ、表示や説明で誤解を生まないことが重要なんですね。

◆ トラブル・行政指導のリスクも?

以下のようなケースでは、実際にトラブルや行政処分のリスクがあります。
• 加熱記録が不備
• 「冷凍→解凍」の表示を省略して販売
• 「レア」や「生」などの曖昧な表現によって、消費者が「非加熱品」と誤認した場合

こうした場合、景品表示法や食品衛生法に基づく指導や回収が行われる可能性もあります。
私の知る限りでは、似たような事案で食品衛生法違反で社長と担当責任者が逮捕された事例もあります。

◆ まとめ
• ローストビーフは「加熱食肉製品」として明確な基準がある
• 中心が赤く見えても、規格どおりなら問題なし
• 「生」「レア」「たたき風」など誤解を招く表現には注意
• 解凍品には「解凍」表示が原則必要

◆ 次回予告

次回は、「“解凍”って表示しなきゃダメなの?」をテーマに、
精肉売場でも頻出の「解凍表示」のポイントを解説します!

※当ブログは食品表示の一般的な解説を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を行うものではありません。実務対応の際は必ず専門家にご相談ください。

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