【第8回】「解凍」表示、どこまで必要?~冷凍肉を扱うときの注意点~

こんにちは、肉切る食品法務専門行政書士のカネウジです。

今回は、精肉売場でも特に実務上の判断が分かれやすい「解凍表示」について解説します。

「これ冷凍だったけど、“解凍”って表示しなきゃダメなの?」
「チルドで仕入れたはずなのに、なぜか半分凍ってた…これも“解凍”扱い?」

現場で本当によくある疑問です。今回は制度の実態とともに、私自身の経験を交えてお伝えします。


◆ 「解凍」と表示しないと違反?

結論から言うと、「解凍」表示は、直接的に法律で義務付けられているわけではありません
たとえば食品表示基準(内閣府令)には、「冷凍→解凍」食品に対する明文の規定は存在しません。

にもかかわらず、現場で「解凍表示が必要」とされるのはなぜでしょうか?


◆ 根拠は「誤認防止」の観点にある

「解凍」表示の法的根拠は、主に以下の枠組みに基づいています:

  • 景品表示法(不当表示の禁止)
  • 食品表示法(表示内容の適正化義務)
  • 消費者庁の通知・Q&A・ガイドライン
  • 公正取引協議会による自主規約(※品目による)

特に注意したいのは、以下のようなケースです:

「冷蔵だと思って買ったら、実は解凍品だった」

このような消費者の誤認が発生した場合、優良誤認表示として景品表示法に基づく措置命令の対象となる可能性があります。

つまり、法律上の明確な表示義務はなくても、誤認リスクを避ける目的で「解凍」と表示すべきというのが、現場実務の実態です。


◆ 「冷蔵品」として仕入れたのに凍っていた?現場あるある

これは実際に私が体験した話です。

ある日、鶏モモ肉を「チルド」で発注したところ、納品時には表面がバリバリに凍っていました。

原因は、流通段階での温度管理のズレ。冷気が直接当たったことによる「部分凍結」でした。

このようなケースでは、法的に「冷凍→解凍」とは言えないため、「解凍表示」は義務づけられません。

しかし、見た目やドリップの発生により、消費者に誤認されるおそれがあります。

つまり、表示義務の有無ではなく、「どう見られるか」を意識した判断が求められるのです。


◆ 現場で判断するときのポイント3つ

  1. 本当に冷凍流通されていたのか?
    ・仕入伝票やラベル、納品温度を確認
    ・「冷蔵だと思った」は言い訳にならない
  2. 解凍に伴う品質変化があるか?
    ・ドリップ、色変わり、臭いなどが出ていないか?
    ・「冷蔵」と誤認される可能性のある見た目なら要注意
  3. 誤認の可能性があるなら、あえて「解凍」と書く
    ・法的義務はなくても、トラブルを避けるには有効

◆ ラベル・POP・売場表示の工夫がカギ

  • NG例:「新鮮!牛モモステーキ」
    → 実は解凍品。表示しないと優良誤認になるリスク大。
  • OK例:「解凍 牛モモステーキ」
    → 消費者に誤認させず、トラブル回避に有効。
  • 工夫例:「解凍のためドリップが出ることがあります」「加熱してお召し上がりください」
    → 品質劣化の説明にもなり、安心感アップ。

◆ まとめ

  • 「解凍表示」は食品表示基準に明文化されていない
  • しかし、誤認防止の観点から事実に即した表示が強く求められる
  • チルド品の部分凍結など、現場特有の判断も重要
  • 「どう表示するか」は、「どう見られるか」から逆算するのが現場対応の鉄則

◆ 次回予告

次回は、「原産地表示はどこまで必要?」をテーマにお届けします。
これって国産って評価していい?それとも…現場目線でわかりやすく解説します!


※当ブログは食品表示に関する一般的な情報提供を目的としています。特定の表示判断においては、必ず所轄保健所や専門家へご相談ください。

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