こんにちは、肉切る食品法務専門行政書士のカネウジです。
今回は、精肉売場でも頻繁に問われる「原産地表示」についてお話しします。
「これ、国産って書いていいのかな?」
「カットは国内だけど、育ったのは外国…表示はどうする?」
こんな悩み、現場で一度は経験あるのではないでしょうか?
実はこの「原産地表示」、表示のルールを理解していないと意図せず違反になるケースがあります。
今回は、食品表示法とJAS法に基づいた原則と実務の判断ポイントをわかりやすく解説します。
◆ 原産地表示が必要な食品って?
まず大前提として、すべての食品に原産地表示が必要なわけではありません。
表示が義務付けられているのは主に以下のケースです:
- 生鮮食品(野菜・果物・魚介・精肉)
- 特定加工食品(精肉を原材料にした加工品など)
つまり、精肉売場に並ぶ肉には基本的に原産地表示が必要です。
◆ 「国産」って書いていい条件は?
◆ 精肉(と畜された後の肉)の場合:
- 牛・豚・鶏などが日本国内で育ち、国内でと畜されたもの
- 加工やカットの場所ではなく、「どこで生育され、と畜されたか」で決まります
例:
豪州で育った牛 → 日本でと畜 → ✕「国産」表示できない
日本で育ち、日本でと畜 → 〇「国産」
◆ 食肉加工品(ウインナー・ミンチ・ハム等)の場合:
原材料が複数の国にわたるときは、「原材料に使用した肉の原産国」を記載
例:豚肉(アメリカ産)、牛肉(国産)など
◆ 「国内加工=国産」と勘違いしやすいケース
現場でとくに多い誤解がこちらです:
「オーストラリア産の肉を国内でカットしたから“国産”でいいよね?」
→ NGです!
原産地表示における「国産」とは、最終加工地ではなく、主要な生産地が基準です。
この考え方は、JAS法の原産国表示ガイドラインにも明確に書かれています。
◆ 原産地を省略できる例は?
例外的に、以下のような場合は原産地表示を省略できます:
- 外食店舗での提供(ただし店頭販売は別)
- 消費者がすでに情報を得ていると合理的に考えられる場合(特例)
- あらかじめ個別に容器包装されていない食品(対面販売など)で、かつ食品表示基準の規制対象外とされる場合
ただし、店頭POPで“国産”を強調するなら誤認表示に注意!
たとえば、ラベルに原産地表示がなく、POPにだけ「国産使用!」と書くのはリスクがあります。
◆ 原産地表示の実務ポイント
- 「育成地」と「加工地」を区別する
→ 原産地は「育てた国」が原則 - 表示の統一性を守る
→ ラベルとPOPで矛盾があるとトラブルの元 - 混合原料はすべて記載 or 最も多い産地のみ記載(例:国産・米国産)
◆ よくあるNG表示例
NG表記例 | 問題点 |
---|---|
「国産牛(実際は豪州育ち→国内と畜)」 | 原産地偽装に該当。景品表示法違反リスク |
「国内加工 牛肉」→国産と誤認させる表現 | 景品表示法上の不当表示(優良誤認)となる可能性 |
◆ まとめ
- 原産地表示の判断基準は「育成地」が原則
- 「国内加工=国産」とはならないので注意
- 精肉と加工品では表示ルールが違う
- 表示ラベルとPOPは必ず整合性をとること
◆ 次回予告
次回は、「食品添加物の表示ルール」について解説します。
「無添加って書いていいの?」「着色料・保存料って全部書く必要ある?」など、現場で迷いやすい添加物表示の実務をわかりやすく整理します!
※当ブログは食品表示に関する一般的な情報提供を目的としています。特定の表示判断においては、必ず所轄保健所や専門家へご相談ください。
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